郵便配達員の見た夢……シュヴァルの理想宮



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絵画や彫刻、音楽等の芸術は、普通、専門の教育を受けた芸術家がその時代の流行や芸術活動の潮流の影響を受けて生み出すのが一般的です。

しかし、中にはそうした専門教育を受けることなく、また時代の潮流や流行とは無関係に、ただ作る者本人の抱く世界を表現するために製作された作品も存在します。

そのような芸術作品はアウトサイダー・アートと呼ばれています。

ある一人の男が33年間を費やし築き上げた壮大なアウトサイダー・アート……それがシュヴァルの理想宮です。
 

■シュヴァルの理想宮

シュヴァルの理想宮は、フランス南東部のドローム県にあります。

無数の石を積み上げ、石灰やセメントで固めて作った城塞のような建築物で、そのデザインは古今東西の様々な建築様式の模倣と折衷からなり、聖書の世界やヒンドゥー教的なデザインすら取り込んでいます。

この不思議な建築物を作ったのはたった一人の男……郵便配達員をしていた、フェルディナン・シュヴァルという人物です。

彼は自分で拾い集めた石を独りでコツコツと積み重ね、33年の歳月をかけてこの理想宮を建設したのです。

フェルディナン・シュヴァルは1836年の生まれで、少年の頃パン屋に奉公に出てパン職人として働いた後、1864年、郵便配達員の仕事に就きました。

シュヴァルは建築や芸術の専門教育を受けた訳ではありません。そんな彼が、どうしてこのような建築物を独りで築き上げたのでしょうか?

 

■アウトサイダー・アート

シュヴァルにはある空想癖がありました。

それは、おとぎ話に出てくるような理想的な宮殿で、彼は毎日郵便配達の仕事をしながら、その空想にふけって楽しんでいました。

シュヴァルが単なる空想に過ぎなかった理想の宮殿を建築するようになったのは、彼が43歳の時、仕事中に奇妙な形の石につまずいた事がきっかけでした。

その石は、そろばん玉をいくつも重ねたような不思議な形状をしていたそうです。

その不思議な形に魅了されたシュヴァルは、それから石を拾い集めるようになりました。

やがて、彼は拾い集めた石を積み重ねて、自分の理想の宮殿を建設し始めました。

近隣の住人たちにバカにされるも、彼はそんなことは一向に意に介さず、独りでコツコツと宮殿の建設に取り組みました。

そうして33年をかけて、遂に完成させるに至ったのでした。

シュヴァルの築き上げた理想宮はマスコミに取り上げられ、広く知られることになりました。

シュールレアリスムで知られる高名な詩人、アンドレ・ブルトンはシュヴァルの理想宮を賞賛し、それを題材にした詩を作っています。

1969年にシュヴァルの理想宮は文化財として登録され、現在ではフランスの重要建造物のひとつとして管理、補修が行われています。

 

■おわりに

シュヴァルはおとぎ話に出てくるような宮殿を夢見てこの建築物を築き上げたといいますが、まるで彼の生涯それ自体がひとつのおとぎ話のような、そんな気がしてきます。

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