3つの太陽が並ぶ 低温がもたらす不思議な自然現象『幻日』
北極圏から日本の東北地方まで、地球上の寒冷地帯では特にその冬場に、特徴的な自然現象の数々が見られることが知られています。
『幻日』(げんじつ)と呼ばれる現象もそのひとつ。
まるで複数の太陽が空に並んでいるように見えるこの『幻日』、一体なぜ起こるのでしょうか?
●微細な氷晶が起こす不思議な現象
『幻日』とは太陽と同じ高度の太陽から離れた場所に光が見える自然現象のことです。
月の光でも同じ現象が起こることがあり、この場合は『幻月(げんげつ)』と呼ばれます。
『幻日』は、大気中の氷晶……微細な氷の結晶がプリズムの役割を果たすことで起こる現象です。
ただし、その結晶のかたちが六角板上であり、六角形の面が水平に揃っている必要があります。
太陽の光が六角形のひとつの側面から進入、屈折して2つ離れた面から出ます。
この時、約22度のズレが生じるために、幻日は本来の太陽から約22度離れた、太陽と同じ高度に出現するわけです。
同じように大気中の水の粒がプリズムの役割を果たして引き起こす現象が、私たちにも馴染み深い『虹』です。
太陽光がスペクトル分解されて七色の虹に見えるように、幻日でも氷晶によって太陽光が分解され、虹のように色がついて見えることがあります。
この場合、中心の太陽に近い側が赤色、太陽から離れた側が青色に見えます。
●モスクワで観測された『幻日』
2014年1月19日、ロシアのモスクワで『幻日』現象が発生、その様子が撮影されました。
現象が確認されたのは現地時間の午前10時から11時にかけての約10分間だったとのことです。
映像はモスクワの地下鉄の車内から地上を走行中に撮影されたものです。
当日の気温は-20℃でした。
映像では、地平線からそれほど離れていない高さある太陽の両側に、第2、第3の太陽が並んで浮かんでいるような不思議な光景を確認することができます。
両側の幻日を頂点とするように、光の輪を見ることもできます。
これは『内暈』(うちがさ)という現象で、氷晶の面が平行に揃っていない場合に生じる現象です。
内暈と幻日は同日に出現することもあります。
太陽の高さが低いほど内暈の直径は広くなり、幻日とくっつくようになります。
また太陽の高度が高くなるに連れて、内暈の直径は狭くなり、幻日と離れて見えるようになります。
幻日は条件さえ揃えば、大阪近辺でも発生することのある現象ですが、目撃例が少ないのは、それが発生する時間に限りがあるからとされています。
■おわりに
虹は何度も見たことがありますが、幻日は見た記憶がありません。
皆さんは見たことがありますか?
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